緑内障は、「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」(日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン)と定義されます。
つまり緑内障は、視神経の形(乳頭形状)と機能(視野)の特徴的な変化から診断されます。緑内障では、眼圧を下げることが治療になります。
眼圧とはなんでしょうか? 眼球の中は、房水(図1)と呼ばれる水で満たされています。水晶体や角膜のような透明な組織の細胞も、酸素やブドウ糖などを取り込んで機能を維持しています。房水は水晶体や角膜に栄養を与え、眼球の形を保つ役割をしています。眼内の毛様体という白眼と黒眼の裏側あたりで房水は産生され、眼内に栄養を与えて、前房に移動し、隅角(線維柱帯、シュレム管)を通って静脈に入り流れ出ていきます。眼圧は通常10 mmHgから20 mmHgが正常範囲内と考えられています。
緑内障は視神経の病気ですが、実際に死んでいく眼の中の細胞は網膜にある網膜神経節細胞という、網膜の最も内側にある細胞です。網膜神経節細胞は網膜が感じた光の情報を脳まで届ける役割をしています。
網膜神経節細胞から、軸索と呼ばれる電線のような構造が脳まで長らく情報を運びます。眼圧が上昇すると、網膜神経節細胞や軸索が障害されて、機能が低下したり死んでしまったりし、脳に視覚情報を伝えることができなくなり、視力が下がったり、視野が欠けたりします。
緑内障は視野が欠ける病気とされていますが、視力に関する神経が障害された場合は、視力が低下します。ただし、緑内障の視野欠損は初期にはほとんど自覚がない場合が多く、治療が遅れることがあります。多くの網膜神経節細胞が障害されると、一部の患者では失明にいたります。
緑内障は日本人の後天失明原因の第1位となっています。また急性緑内障発作と呼ばれる病態では、眼圧が正常値の倍以上に急に上昇し、眼痛、視力低下、嘔気、嘔吐などが生じます。適切な加療をしても著しい視機能障害をきたす場合があります。